マイクとマウンド、夢の向こうへ

「……斎藤くん?

 深明じゃないのね」

ヨッシーは短く息を吐いた。

「宝月か。
 
深明が、熱出して倒れた。
 今、屋上にいる。

 ……俺が連れて行く」

麗菜は一瞬だけ黙った。

 すぐにいつもの落ち着いた調子に戻る。

『深明ったら。

 限界を超えて無理する癖。
 変わらないわね、昔から。

深明の両親、今日も帰りが遅くなるみたいなの。

私の家に連れて行って。

 ベッドも薬も揃ってるわ』

 ヨッシーは少し黙った。

 腕の中の深明を見下ろす。
その細い肩が、かすかに震えていた。

『……ふたりきりで一線越えたら、困るでしょ?』

麗菜の言葉に、ヨッシーは思わず言葉を詰まらせた。
図星だった。

 彼は、深明を「守りたい」と思う一方で、「触れたい」とも思ってしまっている。

「……わかってるよ。
 俺、そういうの、ちゃんと分別つける。
 まだ恋人じゃない女を抱く趣味ないしな」

「ならいいわ。
 執事の八木を昇降口に向かわせる。
 すぐに案内してもらって」

通話が切れると、ヨッシーは深く息を吐いた。

 腕の中の深明が、かすかに身じろぎする。

 その重みが、彼の胸の奥に静かに響いた。