マイクとマウンド、夢の向こうへ

深明の身体は、熱に浮かされてぐったりとヨッシーの腕の中に沈んでいた。

 彼は、しばらくその場に立ち尽くしていた。

 腕の中の彼女は、昔から何度も見てきたはずの幼なじみ。

 けれど今は、違う。

 細い肩、柔らかな髪、かすかに震える指先——

 そして、制服越しに伝わる柔らかな膨らみ。

 そのすべてが、ヨッシーにとって「女の子」としての深明だった。

抱き上げようとして、彼は一瞬ためらった。

 手を添える位置に迷い、視線を逸らす。

  「……ったく、こんな時に何考えてんだよ、俺」

 小さく呟いてから、意を決して深明を抱きかかえた。

 ヨッシーの腕の中で、深明のスマホが震えた。

 白地に赤いリボンをつけた、丸顔のネコのキャラクターが描かれたケース。

 目も鼻も最小限で、口元は描かれていない。

 どこか無表情なのに、見ているだけでほっとするような愛らしさがある。

 ヨッシーはそのスマホを手に取った。

画面に表示された「宝月麗菜」の名前を見て、親指で通話ボタンを押した。

「……もしもし」

少しの沈黙のあと、麗菜の声が返ってきた。

 そのソプラノは、いつもよりわずかに高かった。