文化祭準備の日。

 冷たくなった秋の風が肌を打ち付ける。

 そんな中、深明は、屋上で自分の鞄を枕代わりにしながら寝転んでいた。

 そこに、聞き慣れた低い声が響いた。

「何、文化祭の準備サボってこんなところで寝てんだよ。

 風邪ひいても知らないぞ。

俺たち野球部のマネージャー。
生徒会。
軽音楽部のピンチヒッターのボーカル。

 またあるときは、おふくろさんのYouTubeチャンネルの手伝い。

まだ10代で過労死したいのかよ、深明」

 深明の身体には、ヨッシーのものと思われるグレーのブレザーが掛けられていた。

「ヨッシー、アンタまでサボり?
いいご身分ね」

「誰かさんが人の気も知らないで、
こんなところで寝てるからだよ。

ったく、無防備すぎだろ。

ちょっとはいい女だって自覚したらどう?
深明のファンクラブも出来てるくらいなんだから。

襲われたらどうする気だったわけ?

まだ、深明とは、まだ、ただの幼なじみ。

 何かあっても深明のこと、守ってやれないし。

深明、モテるからいい男なんてすぐ見つかるだろうしな。

いつまでもサボってないで、早く教室戻れよー?」
 
 そう言って、ヨッシーは、深明に手を振って屋上から出ていく。