マイクとマウンド、夢の向こうへ

その日、帰り道で深明が言った。

「ねぇ、ヨッシー。
 
私ね、将来は、“実況アナウンサー"になりたい。

 ヨッシーがマウンドに立つ試合を、私の声で支えたいの。
 ピンチのときも、チャンスのときも、
 
ヨッシーの投げるボールに、ちゃんと気持ちを乗せて実況したい」

当時の彼女は、そう思っていた。

まだ幼いながらも、真剣な目で語るその夢に、ヨッシーは何も言えなかった。

ただ、胸の奥がじんわりと熱くなったのを覚えている。


——その言葉が、ずっと心に残っていた。


以前は、自分だけが知っていたのだ。

 フォームの癖を指摘する時の、真剣な横顔。

 正解を見つけた時の、太陽みたいな笑み。

 他の誰でもない、自分のためだけに、徹夜で分析レポートを書いてくれていた時間。
 
それらが全部、他の誰かにも等しく向けられている。
 

……他の投手に向けて、他の打者に向けて。

その事実が、胸の奥をじわじわと焼く。