マイクとマウンド、夢の向こうへ

その翌日から、深明の元には投手も野手も、次々と相談に訪れるようになった。

ブルペンの隅。

試合後の空気がまだ残るその場所で、ヨッシーはひとり、黙ってボールを握っていた。

遠くから聞こえるのは、深明が他の部員にアドバイスを送る声。

「七回のあの回、なんで急に球が浮き始めたんだと思う?」

 エースが帽子のつばをいじりながら訊く。

 深明はノートを開き、該当ページを指で示した。

 「三球目あたりから、踏み出し足の角度が三センチ外にずれてる。

 右打者への外角は決まるけど、左打者への内角が全部甘く入ってる」

 「え……
 そんなの、自分じゃ気づかなかった」

「俺、六回の打席で二球目のストレート空振りしたでしょ?

あれ、何が悪かった?」

 四番打者の男子が首をかしげる。

 「トップの位置が早すぎたの。

 投手のセットが一拍長くなった瞬間に、合わせようとして急ぎでバットを出して引っ掛けてる」

 深明は彼のバットを軽く持ち、腰を落として実演して見せる。

 「次からは投手の呼吸をもう半拍、待つこと」


その声は、真剣で、優しくて、誰にでも等しく向けられていた。