マイクとマウンド、夢の向こうへ

数年後──アメリカ、テキサス州。

 春の夕暮れを照らす球場のライトが、緑の芝を鮮やかに染めていた。

 マイナーリーグのスタジアム。

 この試合は、斎藤芳尚──ヨッシーにとって特別な意味を持っていた。

 ──メジャー昇格をかけた、大事な一戦。

マイナーリーグでの初登板のブルペンに立つヨッシーの背中を、マイクが捉える。

「──ピッチャー、ヨシヒサ・サイトウ!」

ブルペンからゆっくりと歩み出る背番号「30」に、観客席から大きな歓声があがる。


その歓声は、未来への予兆のようだった。

 かつて日本の甲子園で背負った「1番」とは違う番号。

「30」は、彼がアメリカで自ら選んだ挑戦の証だった。


ベンチ裏。

 監督は腕を組み、険しい視線をマウンドへ送る。

 スコアボードには、2アウト満塁。

 点差はわずか1点。

 監督は腕を組み、試合展開をじっと見据えながら低くつぶやいた。

 「……ここで抑えりゃ、間違いなく声がかかる」

投手コーチが小さくうなずいた。

 チームメイトたちも、タオルを握りしめたまま息を飲む。

その視線には、仲間としての誇りと、少しの羨望が入り混じっていた。