マイクとマウンド、夢の向こうへ

直斗が、そっとポケットから小箱を取り出す。

 開くと、繊細なデザインの、シルバーの指輪が現れた。

 曲線の真ん中に、ひとつ石が煌めいている。

「これから、いろんなことがあると思う。

 でも──その全部を、一緒に越えていきたい」

「……一緒に、住もうか」

 麗菜の瞳から、光るものが頬を伝った。

「直斗……

 いいの?私で……」

「麗菜がいいんだ。

 何度か、俺の健康を気遣って、おかずを何品も作ってくれてただろう?
 
もう決めてたよ、その時から。

麗菜の夢も、俺の夢も、ふたりで一緒に育てていきたいんだ」

震える指先で、麗菜は指輪の箱を受け取った。

「不束者ですが、よろしくお願いします。


 直斗がいれば、楽しい事は2倍嬉しくて、
 悲しいことは半分以下になる気しかしない。

 そんな生活に、したいな」

「もちろん、喜んで」

 
麗菜は、指輪の箱をそっと閉じて、胸元に抱きしめた。

「……この夜、忘れないようにしようね」

直斗は頷きながら、彼女の手を握った。

「忘れるわけないよ。

 これが、ふたりの“はじまり”なんだから」

窓の外の東京の街は、変わらず輝いていた。

 でも、ふたりの目には、もう違う景色が映っていた。

——未来を、ふたりで描いていく景色。

 「近いうちに、麗菜家にお邪魔しようかな。
両親にも、弟くんにも、会いたいから」

「その後に、直斗の家にも行かないと」

ふたりを祝福するようなレストランの明かりを、指輪がキラリと反射していた。