マイクとマウンド、夢の向こうへ

スコアボードに刻まれた数字は、現実を残酷なまでに突きつけてくる。
 
春の地方大会二回戦敗退――

 それが、今年の甲子園への終わりを意味していた。
 
入部したばかりのヨッシーは、まだベンチ要員だった。

 悔しさも、焦りも、言葉にならないまま、ベンチ裏の廊下に立ち尽くしていた。


 湿った土と汗の匂いが混ざる空間。

深明はスコアブックとノートを抱え、静かに片づけを続けていた。

 その手元には、びっしりと書き込まれたメモがあった。

 【六回裏 1アウト ランナー二塁】

 ――この回から球速が平均132km/hから129km/hへ低下。

 投球間隔も3秒ほど長くなる。

 リリース時、腕の角度が肩より下がり、縦のスライダーが横滑りしている。

 【四回表 5番打者】

 ――バント構えからヒッティングに切り替える際、右足の爪先が一瞬外を向く癖あり。

 三振時も同じ癖を出していた。
 
【三回裏 捕手サイン】

 ――インコース要求時にミットを胸前から一度膝に落とす仕草。

 相手走者が盗塁のスタートに利用していた可能性大。

彼女は、このメモを、試合後の一晩で整理した。

 それだけでは飽き足らず、10ページを超える分析レポートにまとめあげた。
 
投手・野手それぞれの強化ポイントまで網羅されたその資料。

もはや部活動の記録というより、専門誌の戦術特集に近かった。