マイクとマウンド、夢の向こうへ

都内。

 静かな住宅街の一角にある、年季の入った1Kのアパート。

 その一室のカーテンが、風で揺れていた。

 「麗菜……久しぶりに、会いたい」

 麗菜は、すぐに電話を切ると、電車に飛び乗って、彼のアパートに向かったのだった。

ドアが開かれた瞬間。

 相変わらず、料理をしている形跡のないキッチンが目にとまった。

「いらっしゃい」

 直斗に、少し照れた笑顔で迎えられた。

 麗菜は緊張の面持ちで、ゆっくりとボルドーのショートブーツを脱いだ。

 小さな部屋には、教科書やアナウンス練習の原稿、収録で使ったマイクが置かれている。

ソファに腰を下ろした直斗が、深呼吸して切り出した。

「実はな……今日、アナウンサー試験の結果が出たんだ。
内定、もらえたよ」

「えっ……!」

 麗菜の目が一気に潤む。

 「ほんとに?

 直斗……!

 すごい、おめでとう!」

勢いのまま隣に身を寄せ、手をぎゅっと握った。

 直斗は少し照れながらも、その手を強く握り返す。

「……ありがとう。

 やっと夢のスタートラインに立てた」

麗菜も勇気を出して、言葉を重ねた。

 「私もね……大学、合格したんだ。

 管理栄養士の道に進める」

「麗菜……」

 直斗の瞳が優しく細まり、彼は麗菜を抱き寄せた。