マイクとマウンド、夢の向こうへ

布団に横たわっても、瞼を閉じても、直斗との情景が何度も蘇る。

 放送室で触れた指先、夕暮れの商店街で見上げた横顔、耳元で響いた低い声——。

 それらが胸の奥で波紋を広げ、眠りを遠ざけていく。

息をつき、枕元のスマホを手に取る。

 指が迷った末に開いたのは、深明とのメッセージ画面だった。

 朝にやり取りした、可愛いキャラクターのスタンプが画面に並ぶ。

『まだ起きてる?』

 そう書こうとした。

 彼女のことだから、まだ起きているだろう。

 途中でためらい、打ち直す。

「深明。
どうして人って、誰かのことを好きになっちゃうんだろう」

送信ボタンを押すと、画面の明かりがやけに強く感じられた。

 数分後、すぐに既読が付き、返信が届く。

『それってね、心が誰かに向かって、静かに扉を開け始めた証なんだと思う。

 好きになるって、理屈じゃなくて、感覚の積み重ねだから。

 気づいたときには、もうその人のことを考えてる。

 無理に止めなくていいよ。

 麗菜が安心できるタイミングで、少しずつ進めばいい。

 その気持ちが、ちゃんと麗菜の中で育っていくなら——それは、すごく素敵なことだと思う』

柔らかな文字の並びが、まるで深明の声色で響く。

 その優しさは、深明のきっと両親から受け継いだものなのだろう。

麗菜は、そっと彼女への感謝を呟いて、眠りについた。