マイクとマウンド、夢の向こうへ

──会場に小さな驚きの声と、大きなシャッター音。
 
後方に座っていた深明は、思わず口にしてしまった。

「……惚れ直すじゃん。
 ヨッシーのバカ」

すぐ横でスマホを構えていた母・深月。

 隣の愛娘の様子を見て、にやりと笑った。

「やるわね、ヨッシーくん……。

大勢の前で堂々と、恋人って。

 嬉しいくせに、深明ったら。

 ほんと、素直じゃないわね」

「お母さん、なんで来てるの?
 
お父さんまで……」

 深明は小声で抗議する。

深月は、まるで用意していたかのように答えた。

「将来家族になるかもしれない人の記者会見だもの。
 見るに決まっているじゃない」

「ちょっと……っ!」

 深明は慌ててうつむいた。

そのやりとりを聞いていた父・道明は、肩をすくめて小さく笑う。

──そして、カメラがふと後方を映し出した瞬間。

「あれ?あのふたり……」

 「YouTube“野球メンタル解説動画”の夫婦……!」

会場がざわめく。

「ってことは、隣にいるの、娘さん?」

 「じゃあ……彼女なのか?
 斎藤選手の“恋人”って……」

一斉に視線が注がれ、深明は顔を真っ赤にしてうつむいた。

 道明は苦笑しながら、ぼそり。

「まぁ、バレてもいいんじゃないか?」

深月は録画を止めながら、どこか楽しそうに。

「……これ、チャンネルで使えるかもね」

「え?
 どこが?
 っていうか……使う気!?」

そんな家族のやりとりすらも、どこか温かく映った。

──この会見の日を境に、ヨッシーだけでなく、彼らの“未来”もまた、注目を集めることとなった。