マイクとマウンド、夢の向こうへ

甲子園の話に触れるときには、少し言葉が詰まった。

 「ベースカバーで足をひねってしまい、無念の降板となりました。

 あの試合は僕の野球人生で一番悔しくて、一番誇らしいものでした」

会場にいる誰もが、その時の彼の気持ちを思い出すように、静かに耳を傾けていた。

そして話は、支えてくれた人たちへ。

 「監督、コーチ、チームメイト──

 そして、いつも一番近くで支えてくれたマネージャーがいたから、ここまで来られました。

 不甲斐ない僕を支えてくれた皆さんには、感謝しかありません」

一瞬、ざわめく記者席。

 その中で、彼はまっすぐに顔を上げる。

「彼女のおかげで、甲子園で胸を張ってエースとして投げられた。

 本当に、そう思っています」

記者から質問が飛ぶ。

 「その“マネージャー”とは、どういう関係で?」

一瞬の間のあと、少し笑みを浮かべて、はっきりと言った。

 
「大切な恋人です」

記者たちの間に、静かな感嘆が広がり、シャッター音が一斉に走る。