マイクとマウンド、夢の向こうへ

それから、1週間が経った。

 秋の冷たい風が身をさすようになり、冬の足音が近づいていた。

 ひとりの高校生が会見場に姿を現す。

斎藤芳尚、18歳── 全国注目の高校生ピッチャー。

 みんなから“ヨッシー”と呼ばれてきた右腕。

集まった記者の数は決して少なくない。

 パシャリ、パシャリとシャッター音が響くなか、彼は背筋を伸ばして歩み出る。

ユニフォーム姿ではなく、学園の制服。

 それだけで「まだ18歳なんだな」と感じさせる。

 その表情はどこか大人びていて、会場全体を落ち着かせる不思議な雰囲気をまとっていた。

「本日はお集まりいただき、ありがとうございます」

深々と頭を下げてから、ヨッシーは一つひとつ言葉を選ぶように話し始めた。

「このたび、僕はMLBのマイナーリーグ契約を受けることにしました。
 挑戦の舞台は、アメリカ・テキサスです」