マイクとマウンド、夢の向こうへ

深明は最後にもう一度、ページをめくってレポートを確認した。

 これが、今の自分の限界値。

 深明は、確かな手応えを感じていた。

夜の静かな自室でノートPCを開き、メール画面を立ち上げる。

 宛先は――スカウトのダニエル・クーパー。

件名に「Team Analysis Report 」と打ち込み、本文には簡潔にこう記した。

Daniel,
チーム全体の現状分析と、今後の育成・補強プランをまとめました。

 心の動きも含めて、選手たちの“流れ”を読み取ったつもりです。

 ご確認ください。

 – Mia Akiyama
 
ファイルを添付し、送信ボタンをクリックする。

 小さな送信音が響き、画面に「送信しました」の文字が浮かんだ。

深明はふっと息を吐き、椅子の背にもたれかかる。
 
——これが、今の自分の限界値。
——でも、限界は“始まり”でもある。

あとはダニエルが動く番――。

 自分のレポートが、チームの未来を左右する戦略の一助になることを願って。

深明はデスクの椅子からベッドに寝転がり、目を閉じた。

まぶたの裏に浮かんだのは、ヨッシーの背中。
甲子園のマウンドで、痛みを押して投げ続けた姿。

——あの人の未来に、私の言葉が届くなら。
——それだけで、十分だ。

 静かな夜。
USBの冷たさが、まだ指先に残っていた。

その感触は、確かに“未来の鍵”だった。