マイクとマウンド、夢の向こうへ

数日後。

放送部室の窓を、弱い雨が叩いていた。


この日の部活が終わった頃も、それは続いていた。

「雨、まだ止まないな。

天気予報、夕方には止む、って言ってたんだけど、外れたね。

傘、ある?

良かったら、駅まで送ろうか」

直斗に言われ、並んで歩く。

「……そういえば、君は覚えてるかな?」

 「え?
何を、ですか?」

 麗菜が見上げた先輩の横顔。

 ほんの少しだけいたずらっぽい顔で、麗菜の胸が優しく甘い音を鳴らした。

「酔っぱらいに絡まれてた俺を、助けてくれただろ。

あれ、結構ショックだったんだぜ。

普通、男の人が絡まれてる女の子をカッコよく助ける側じゃん」

「……だって、困ってる人は、助けなきゃいけない、って思って」

 「あのとき、あの酔っぱらい、注意した麗菜にまで絡んできて……」

 先輩は懐かしそうに笑う。

「……合気道の小手返しで倒す小学生、初めて見たよ」

「だって、習ってたし。

 守れるなら自分の身は自分で守れ、って。
 それが宝月家の教育方針なの」

「おかげで助かった。

あれ以来、俺、ずっと——」

 直斗は、麗菜から視線を逸らした。

傘を叩く雨音が、徐々に強くなった。


「……ずっと、麗菜のこと探してた」

その言葉に、胸の奥がぎゅっと締め付けられるのを感じた。