マイクとマウンド、夢の向こうへ

ダニーは続ける。

 「その映像を観た上で、次の2つをまとめてほしい。

 まずは来季、チームが順調に戦い、ポストシーズンに進むための展望。

 もうひとつは、そのために必要な戦力補強ポイントだ。

 レポートは日本語で構わない。

 期限は1ヶ月だ」

深明は資料とUSBを交互に見つめながら、唇をきゅっと結んだ。

 自分だけの特別な学び──

 球団と大学が用意してくれたチャンスが、目の前にある。

この学園で3年間やってきたことが、確かに未来を進ませる歩みになっている。

「……やります。

 絶対、やってみせます」

ダニーは静かに頷き、深明の覚悟をそっと会議室の空気に刻み込んだ。

 職員室を出たあと、深明は校舎の階段をゆっくりと降りた。
手に握ったUSBの冷たさが、まだ指先に残っている。

ふと、グラウンドの方へ目を向ける。

そこには、後輩たちがキャッチボールをしている姿があった。

——この場所で、私は“誰かの背中”を見続けてきた。
——これからは、“誰かの未来”を支える側になる。

スマホを取り出し、メッセージ画面を開く。

 そこには、ヨッシーの名前。

「……伝えたいな。
 この瞬間を、いちばん最初に」

深明は、少しだけ笑って、画面に指を添えた。

 その笑顔は、確かに未来を見ていた。