マイクとマウンド、夢の向こうへ

その言葉に、ヨッシーの心臓が早鐘を打った。

 「君の全試合をチェックした。

 足を痛めても、ふくらはぎを痙攣させても、投げ抜いた姿は忘れられない。

 フィジカルもメンタルも、見事だ。

 ──正直に言おう。

 厳しい道になる。

 だが君なら、その先にたどり着けると信じている」

 まっすぐな眼差しに、兄のような温かさと誠実さが重なる。

 ヨッシーはその視線を正面から受け止めた。
 
ヨッシーは、姿勢を正して、静かに聞き入った。


「テキサスにある我がチームと、マイナー契約を結ばないか。

 君の未来を、一緒に育てたいんだ」


 ダニーの声は穏やかだった。

 だが、そこに宿る重みが、未来の挑戦を伝えていた。

ヨッシーの瞳が一瞬揺れた。

 遠くアメリカのグラウンド、まだ見ぬ挑戦――

その選択肢が目の前に示されている。

 ふくらはぎの痛みを押して投げた最後の一球。

 救護室で泣いていた深明の姿。

 巽先生が背中を押してくれた言葉。

——あの夏の全部が、今、この瞬間に繋がっていた。
 

 彼の答えは、決まっていた。


 小さく息を吸い、手を膝に置く。

 周囲の声も、教室の光も。

 すべてが一瞬、静止したかのように感じられた。

「行きます」

静かな職員室に、その言葉が穏やかに響く。

 ダニーが小さく頷き、越智先生も微笑む。

 巽先生の視線は、誇らしげに揺れた。

 その瞬間、ヨッシーの未来は、確かに動き出した。

窓の外では、まだ夏の名残を残した青空が広がっていた。
その空の向こうに、彼の新しいグラウンドが待っていた。