マイクとマウンド、夢の向こうへ

9月といえども、真夏の気温だった。

 空はまだ青く、学園の校舎には朝の光が差し込んでいる。

『3年1組の斎藤 芳尚。

 至急、職員室に来るように』

 校内放送が静かに響いた瞬間、教室の空気がわずかに揺れた。

 生徒たちが一斉にヨッシーへと視線を向ける。

「ヨッシー、何かあったのかな……」

 誰かが小さく呟く。
 

 ヨッシーは背筋を伸ばし、少し手を握りしめてドアへ向かった。
手を掛けると、微かに鼓動が早まる。

 何かが待っている――
 そんな予感が胸に広がった。

職員室のドアを開けた瞬間、空気が少しだけ重く感じられた。
 
 見慣れた巽先生の横に、英語教師の越智《おち》先生。

 ヨッシーの拙いながらも、伝えようとする意思を評価してくれている男性教師だ。
 
そして、その隣に立つ、ひとりの外国人男性。

 男性は落ち着いた眼差しをヨッシーに向け、柔らかな笑みを浮かべる。

 まるで、緊張しなくていいと言ってくれているようだった。

 「おお、ヨッシー。

 来たな。
 少し話がある。

 まずは、座れ」

 巽先生が、示した椅子に座る。

外国人が、ゆっくりと英語で口を開いた。

 越智先生がすぐさま日本語に訳す。


「私はダニエル・クーパー。

 みんなからはダニーと呼ばれている。

 スカウトとしてはまだ若いほうだが──
 君にどうしても会いたくて、今日ここに来た」

 ……スカウト。