マイクとマウンド、夢の向こうへ

それから、3日が経った。

 真夏の陽射しはまだ強いが、甲子園から戻った学園のグラウンドには、どこか新しい空気が漂っていた。

 部員たちは練習前に円になって集まり、エースの最後の言葉を待っている。

ヨッシーは背番号「1」のユニフォームを手に持ち、しばらく黙って後輩たちの顔を見渡した。

 誰に、この番号を託すべきか――迷っていた。

「……エースは、ただ投げるだけじゃない。

 仲間の気持ちを背負って、マウンドに立つ役目だ」

視線の先には、剛腕の2年生・森下。

 球速はあるが、気持ちが熱すぎて空回りすることもある。

 冷静な制球力を武器にする左腕の1年・佐伯。

 まだ経験不足だが、将来性は十分だ。

深呼吸を一つして、ヨッシーは意を決した。

 背番号「1」を差し出す。

「……森下。

 この番号は、お前に預ける。

 ただ速い球を投げるだけじゃ駄目だ。

 打たれても、背中でチームを鼓舞できるエースになれ」

森下は一瞬目を見開き、緊張と決意の入り混じった表情で力強く頷いた。


 「はい!斎藤先輩!

 俺、必ず甲子園で勝ちます!」

ヨッシーはにやりと笑い、グラウンドの部員たちに向かって言った。

 「俺の代で出来なかった甲子園優勝、お前たちで叶えるんだ」

その言葉に、円の中心に集まったチームの空気が一気に熱を帯びた。