マイクとマウンド、夢の向こうへ

深明は、顔を上げる。

 目は赤く腫れていたけれど、その瞳はまっすぐだった。

 
「勝てなくても、ヨッシーの背中は、誰よりも強かったよ。
 ……私は、ずっと見てた」

「これから先、どんな道を選んでも。
 私は、隣にいるから」

「……ありがとう。
 それだけで、また投げたいって思える」

 ふたりは、敗北の中で、確かに未来を見つめていた。

甲子園優勝には届かなかった。

でも、夢はまだ終わっていない。
 

 ヨッシーは、そっと彼女の手を握る。

 そして、ぽつりと呟いた。

 「まっすぐ、深明が感情ぶつけてくるの、初めて見た。
 そのほうが、深明っぽいな」

 深明は、涙の中で少しだけ笑った。

 そして——
ヨッシーは、深明の濡れた頬にそっと触れ、唇を重ねた。

 そのまま、ふたりは言葉を交わすことなく、ただ抱き合っていた。

救護室の窓の外では、夕陽がゆっくりと沈んでいた。

 夏の終わりを告げるように、赤く染まった空が静かに広がっていた。