マイクとマウンド、夢の向こうへ

泣きながら、深明はヨッシーの胸板をぽすぽすと叩いた。

 弱い握力で、何度も、何度も。

 痛みではなく、悔しさと心配がこもった拳だった。

 
ヨッシーは、何も言わずにその拳を受け止めた。

 ただ、深明の背中に腕を回し、そっと抱き寄せる。

 彼女の髪を、優しく撫でながら言った。

 
「降りたら、後悔するって思ったから」

 「でも……!
 それで、これからずっと投げられなくなったら、意味ないじゃん!」

 「ベンチ裏で、深明がまだ必死に分析してた。

 俺のフォーム、打者の傾向、球速の変化——

  ……じゃあ、俺も、なるべく投げてなきゃさ。

 深明が、俺の“未来”を守ろうとしてたから」

 ヨッシー、と呼びたかったであろう深明の声。

 それは嗚咽へと変わって、言葉を遮る。

 ヨッシーは何も言わず、ただ彼女を抱きしめ続けた。

 やがて、深明の手がそっとヨッシーの右脚に触れる。

 包帯の下の熱が、彼女の指先に伝わる。

 「……痛いでしょ。
 ほんとは、ずっと痛かったんでしょ……」

 ヨッシーは、少しだけ笑った。

 
「痛いよ。

 でも、深明が隣にいるなら、ちょっとくらい痛くても、投げたいって思える」