マイクとマウンド、夢の向こうへ

──数日前、ヨッシーがそっと告げた言葉。

「明日。
 明日だけじゃなくて、もしかしたらその先も。

 俺がどんなに打ちこまれて、点を取られても──

 深明は、ちゃんとやるべきことをしてくれ。

 その姿を、俺は見ていたい」

 あの言葉は、今日のこれを預言していたのか、とも思ってしまった。

ただペンを握りしめ、ノートを濡らす涙を拭かないまま、マウンドで投げ続けるヨッシーを見つめ続けた。

(もう、止めて……!

自分の夢を、自分で壊すつもり?

ここで無理したら、マイナー契約して、MLBで投げる夢、なくなっちゃうかも、しれないんだよ?

ヨッシー……
いいの?)

7回裏。

真っすぐを鋭く差し返された打球。

右中間を直撃し、フェンスを弾き返すタイムリーヒットとなる。

 二者が生還し、ついに逆転を許した。

 観客席はざわめき、歓声が一気に球場を包む。
 スタンドの熱気が、ベンチまで押し寄せる。
 

「これ以上は、アイツの将来を、自ら閉ざすことになる。何より悔しいのは、アイツ自身だ。

 分かるな?」

その声は、誰に向けたものでもなく、“決断”そのものだった。
 
ヨッシーの降板が決まった。

 帽子を深く被り、ベンチ裏へと下がっていく。

 その背中に、深明は言葉をかけられなかった。

 かけたい言葉が、喉の奥で震えていた。

 「……ヨッシー……」

 声にならない声が、球場の喧騒にかき消されていく。