マイクとマウンド、夢の向こうへ

グラウンドの空は、真夏の青。
白球の軌道の先に、ふたりの未来が、確かに伸びていた。 

 ベスト8を決める大事な試合。

 マウンドを託されたのは、背番号1。

 正瞭賢高等学園の絶対的エース、斎藤芳尚。
 通称、『ヨッシー』。

 ここまでの勝ち上がりは決して楽ではなかった。

 接戦をものにし、延長戦を耐え抜いた。

 こうして、少しずつ勢いを積み重ねてきた。

 その中心には、常に背番号1の存在があった。

 ここ数日の体温を超える暑さは、容赦なく選手たちの体力を奪っていた。

 ヨッシーも例外ではなかった。

それでも彼は7回まで、ほとんど走者を許さなかった。

 150km/h台のストレートと切れのあるカーブ。

 落ちるスプリット。

 これらを駆使して、相手打線を翻弄していった。

 スタンドの熱狂と期待が、甲子園本戦の舞台に相応しい熱量を生んでいた。

――8回、二死。

四球を出しても顔色ひとつ変えず、淡々と投げ続けていたヨッシー。

 その顔が、全力のストレートを投げ込んだ瞬間、ふっと苦痛に歪む。

 異変を悟った観客席から、ざわっ──と低いどよめきが広がる。

ベンチからの声が飛んだ。

「交代するか」

 ヨッシーは一度だけ首を横に振った。

 「まだ、投げられる。
 この回までは、行かせてください。

 最後の打者だけは、アウトにしたいんです」

最後の打者、三塁へのゴロ。

 野手が慌てることなく冷静にさばき、8回の攻防を見事に終える。