マイクとマウンド、夢の向こうへ

入部してから2週間後に行われた、練習試合。

 ヨッシーが圧巻のピッチングを見せた。

 四球を出して歩かせても、表情はほとんど変わらない。

 三振を取ると、マウンド上でガッツポーズ。

「ふふ。
 ヨッシーらしい。

 "ナイスピッチ"だったよ」

練習終わり。
ヨッシーが深明に話しかけてきた。

「見てただろ、深明。
また、昔みたいに何か分析してたのか?
俺のピッチング」

「ストレートは完璧。

 でも、スプリットが落ちきってなかった。

ちょっと焦ったでしょ。
それを顔に出すまいとしてたのね。

 セットポジションに入る前、指に力入ってた」

「こえーよ、お前。
何でそこまで見えるんだよ。

深明のおふくろさんにそっくりだ、
 そういうとこ」

深明の母の深月。

彼女は【Dr.Mの副音声】という、
『野球をメンタルで分析するYouTubeチャンネル』を立ち上げている。

父親の道明も、さりげなく参加している。

 たまに差し込まれる夫婦のやり取りが、ほのぼのしていて癒やされるとバズった。

 それから、瞬く間に人気チャンネルとなったのだ。

 深明も、分析資料の整理と題材の選定を手伝っている。

「お前、抱えすぎだろ。

 いろいろと。

 倒れるなよ?

まぁ、倒れるなら、俺の前で倒れろ。
支えてやるからよ」

「ほんと、ずるいよね。
そういうこと、さりげなく言うんだから。

 もう、ヨッシーのこと、ただの昔からの幼なじみとして、見れなくなるじゃん」

「ふーん。

 見て、くれないんだ?

 俺は、幼なじみ以上として、深明のこと見てるけど」

 ヨッシーはそれだけ言うと、グラウンドの更衣室に消えていった。

 ……まったくもう。

 言うだけ言って、ズルい人。