マイクとマウンド、夢の向こうへ

電話や手紙。

 時にはオンラインで同じ映画を観ながら感想を語り合う。

 なるべく、週末には時間を作って会うようにしていた。

 試験やレポート、アルバイトで忙しい時期は、1ヶ月会えないのはざらだった。

それでも――

「ねぇ、直斗。

 私、ちょっとだけ不安になるときがあるの。

 距離とか、時間には勝てない。

 気持ちが離れちゃわないかな、って」

「……俺もだよ。

 だから、少しでも繋がっていたい。

 たとえば、この間みたいにビデオ通話するとかさ。

 俺も、空きそうな日は伝えるから、その時にでも。

 ゆっくりカフェで食事でもしようか。

 麗菜が好きそうなお店、見つけておくよ」

「……直斗。

 貴方が恋人で、良かった」

「俺もだよ」

そして、駅前のベンチを離れるとき。

 直斗は、麗菜の手をそっと握った。

「この手、離したくないな。
 
でも、次に会える日まで、ちゃんと頑張る。
 
麗菜も、無理しすぎないで」

「うん。
 私も、直斗のこと想いながら、頑張る」

ふたりは、手を離すまでの時間を、少しだけ長く引き伸ばした。

 バレンタインの夜。

冷たい風が吹いていたけれど、
ふたりの心には、確かに春の予感が芽生えていた。