マイクとマウンド、夢の向こうへ

卒業後は、都内の大学で奮闘する松倉直斗。

 まだ高校生2年生の麗菜。

 彼らの関係も、穏やかに続いていた。


 『バレンタインの日、空いてる?』

直斗へのメッセージ画面。

 送信ボタンを押した後、指が震えた。
 

『その日は絶対、空けておくよ。
 楽しみにしてる。

 麗菜が会いたいって言うんだ。

 無理してでも、時間は作るよ』

バレンタインデー当日。

 久しぶりに再会した2人は、駅前のベンチに並んで座った。
 

 肩部分のみが透けている白いニットワンピース姿の麗菜。

 彼女が手渡した小箱は、ネイビーのリボンで丁寧に結ばれている。

「最近、レポートで遅くまで起きてる、って言ってたから。

 糖分補給に、トリュフにしたの。

 甘すぎたら、ごめんなさい」

「いや、嬉しいよ。
 ありがとう。

 麗菜が作ってくれたものなら、何でも食べるよ」

直斗は優しく微笑むと、麗菜の額にそっと唇を触れさせた。

直斗が小箱を開けると、手作りのトリュフが並んでいた。

 ひとつひとつ、形は少し不揃いだけど、丁寧に包まれている。

「……これ、全部麗菜が?」

「うん。
 夜、こっそりキッチン借りて。
 直斗の顔、思い浮かべながら作った」

「それ、反則だな……」

直斗は、ひとつ口に運ぶ。
甘さの中に、ほんのりビターな風味が広がる。

「……うまい。
 これ、レポートの合間に食べたら、絶対元気出る」

麗菜は、少しだけ頬を染めて笑った。