マイクとマウンド、夢の向こうへ

ホテルの静かな廊下を歩きながら、深明と麗菜、ヨッシーは今日の興奮を小さく笑いに変えて囁き合う。

 「今日のホームラン、本当にすごかったね」

 「うん……!

 ずっと覚えていたい瞬間だよ」

部屋の前で立ち止まり、ヨッシーにお休みを言った麗菜。

 彼女は、と頑張れのエールのように、深明の背中をそっと叩いた後、静かに部屋に入った。

少しの沈黙。

 それを破ったのは、ヨッシーの方だった。

「お疲れさま。

 今日は本当に楽しかったな」

 「一流の選手の戦いを、画面越しじゃなくて、現地で観られて、よかった」

「あんな場所まで打球を飛ばせるパワーってすごいな……って思った。

 いつかは、俺もあの場所でマウンドに立って、打たれない球を投げたい。

 改めて思ったよ」

そこで言葉を切って、ヨッシーは深明を見つめた。

「その時は、隣に、お前もいてほしい。

 俺は、そう思ってる」

「隣に、いていいの?」

「当たり前だろ。
深明以外、考えられない。

ぎゅっと、ヨッシーに抱きついた深明。

 そのままヨッシーはそっと深明の唇に軽くキスを落とした。

「これくらいにしとく。
これ以上は、俺が、寝れなくなる。

……おやすみ、深明」

「おやすみ。

 ヨッシー」

深明は、ヨッシーの方を振り返らないようにしながら、部屋に入る。

その後ろから、彼の声が飛んだ。

「今日の私服、可愛かったから、さ。

明日も、楽しみにしてていい?」

「うん。
楽しみにしてて」

今度こそ、深明は、麗菜の待つ部屋に入ったのだった。


 
 まだ冷たい風が吹きすさぶ2月。