マイクとマウンド、夢の向こうへ

観戦と、現地でのファン交流の余韻に浸りながら、3人はスタジアムを後にした。

夜のニューヨークは6月らしく涼しい風が心地よく吹いていた。

街灯に照らされるビル群のシルエットが美しい。

「ほんとに現地で観られるなんて、幼稚園の頃の思い出がつながったみたい……!

あの頃は、ニューヨークじゃなくてロサンゼルスだったけど。
一生忘れられない日になるよ!」

 と深明は、まだテンションが高かった。

 麗菜はにっこりと微笑んだ。

「私もよ。

 本拠地の球場でホームランが観られて、嬉しかった!

国も言語も関係なく喜び合えるって、幸せだね!」

ホテルまでの送迎は、麗菜の執事・八木さんが車で迎えに来てくれていた。

車から降りて、礼儀正しく声を掛けてくれた。

「試合は楽しめたようで、何よりでございます」

礼儀正しく声をかける八木さん。

3人は軽く会釈して乗り込んだ。

車内でも、話は尽きなかった。

 撮った写真をふたりに見せる麗菜。

深明が試合を締めたクローザーのメンタル分析を話し出す。

「その話は、車内で終わらないから後にしたほうがいいと思うぞ」

ヨッシーの冷静なツッコミに、思わず吹き出す麗菜。

ニューヨークの夜風が、興奮冷めやらぬ3人をそっと包んだ。

宝月家が修学旅行ためだけに1棟まるごと貸し切りにした、日本人向けのホテル。

 そのロビーに、担任の男性教師、野田が仁王立ちしていた。

「ったく、遅いぞ!
 お前たち……!」

「すみません……!」

野田は、深明たち3人を、上から下まで舐めるように見ると、呆れたように笑った。

「良かったな。
最高の思い出が、作れたんじゃないか?」

それだけを口にした担任の野田。

 早く寝ろよと言わんばかりに、手を振って廊下の向こうに消えていった。