マイクとマウンド、夢の向こうへ

深明は、ふとスマホ画面に映る自分に目をやった。

 半袖の青いギンガムチェックブラウスに、ネイビーのワイドパンツ。

V字に開かれたブラウスからは、鎖骨がちらりと見える。

 深明が小さくため息をついたのを、隣の麗菜が見逃さなかった。

 昔から、麗菜は些細な表情の変化や仕草によく気が付いてくれる。

それが、入学初日から麗菜のファンクラブが出来るゆえんなのだろう。

「何か元気ないね?
どうしたの?

 私でよかったら、話して」

深明は、小さな声で呟いた。

 その声は、いつも自信に満ち溢れた深明らしくない、沈んだトーンだった。

「私の、今日の私服。

 それなりにちゃんと、可愛いのを選んだつもり。

空港でも、機内でも。

 ヨッシーに、可愛い、って言われてない」

それは、恋人に褒められたいという、深明なりの素直な【年頃の女の子】としての、気持ちだった。

ホテルに戻ってから、手にしたスマホを見ることなく、ぼんやりしていた深明。

 麗菜は、彼女にそっと声を掛けた。

「ねぇ、深明。

 貴女のことを、誰よりも大事にしたいんじゃないかな。

 他の男の人に、可愛い深明を見せたくないのよ。

そうやって、まっすぐ深明を想うしか、出来ない人なのよ、斎藤くんって。

それは、深明がいちばん、分かってるはずじゃないの?

 彼の方から言ってくれるのを、ゆっくり待てばいいと思うわ」

「麗菜、ありがとう」

 深明は、麗菜に向かってそっと微笑んだ。