マイクとマウンド、夢の向こうへ

春の風が、正瞭賢高等学園(せいりょうけんこうとうがくえん)の広い中庭を通り抜けていく。

 開校記念の桜並木は、期待と不安が半々の新入生の足取りを祝福するように満開だった。

秋山 深明(あきやまみあ)は、教室の窓辺に立ち、ちらりと外を見やった。

 風に揺れた黒髪のポニーテールの裾が、首筋を小さく、くすぐった。

 グレーをベースに赤と黄色の線で作られたタータンチェック模様のスカート。

 まだ着慣れない制服の裾を押さえながら背筋を伸ばした。

 ――ああ、始まっちゃったんだ。
 高校生活。

彼女は、ある意味で特異な家庭で育った。

 父・ 道明(みちあき)は臨床心理士。

 母・深月(みづき)は精神科医。

 そういう心の専門家に囲まれて育ち、人の気持ちに敏感だった。

 けれどその感受性は、ときに自分の内側へと沈み込み、抱え込む癖にもつながっていた。

そんな深明を、昔からよく知っている人物がいた。