「きゃあーっ!」
 ネルは、ほうきからまっさかさま。
 すごいスピードで落下していきます。
 がんばった。わたしなりに一生けん命がんばってみた。
 だけど、わたし、失敗しちゃった。
 ゴメンね、パンぞう。わたし、できないことばっかりで。
 とくい技の空飛ぶ魔法も、うまくいかなかった。
 それに……それに、ゴメン、モエ。
 せっかく友だちになってくれたのに、ドレス作りをてつだってくれたのに、いっしょにアイドルやろうって言ってくれたのに。
 みんな、いっぱいゴメン! わたしひとりじゃ、なにもできなくて――。
 ネルのひとみから、なみだがいくつもこぼれ落ちました。
 そのときです。
「ネルーッ!」
 大きな呼び声がしたかと思うと、ネルのからだはポフンッ! となにかの上に落ちました。
 顔をあげると、そこには。
「ネル、よかった! 間に合ったわ」
 はちみつ色のロングヘアとエメラルド色のひとみをキラキラさせている女の子。
「モエ! どうして……?」
 目をパチクリさせているネルに、
「ネルのことが心配で、あたしなりの『おさいほうの魔法』を使って、あとを追ってきたのよ」
 と、モエは笑いかけました。
「モエのおさいほうの魔法?」
 すると、モエのうしろから白ウサギたちが顔を出しました。
 なぜかみんなムスッとした顔つきです。
「ひどいなー。ボクたちのマント、みんなうばうことないだろ?」
 白ウサギはモエにプンプン。
 だけど、モエはすました顔で、
「あら、いいじゃない。友だちを助けるためよ」
 どういうこと?
「このじゅうたん、よくできてるだろ? モエが作ったんだぞ」
 パンぞうにそう言われて、よく見てみると、ネルはピカピカ輝く大きなじゅうたんの上にいました。
 それも、ただの大きな布ではなく、小さな布が一枚一枚ていねいにぬい合わされています。