ゴメンね、モエ。あんな言いかたして。
 でも、モエをキケンな目にあわせるわけにはいかないの。
 レナちゃんのパンケーキ屋さんで、モエや妖精のみんなといっしょに歌っておどったとき、わたし、とっても楽しかった。
 いつものまっくろいローブやとんがりぼうしじゃなくて、カラフルなエプロンドレスを着て、まるでいつもとちがう自分になったみたいだった。
 だから、モエに
「いっしょにアイドルやろうよ!」
 って言われたとき、とてもうれしかった。
 だけど、わたしは魔女なの。
 さっきの白ウサギさんたちだけじゃない。
 ああいう言葉、むかしからたびたび投げかけられてた。
「魔女ってちょっとコワいよね」
「魔女がおしゃれするなんてヘンよ。カラフルなファッションなんてにあわないわ」
「怒らせたら呪いとかかけられそう!」
 もし、このままモエといっしょにいたら、モエまでひどい言葉をぶつけられるかも。
 つらい思いをさせてしまうかも。
 そんなのわたしイヤだよ。
 モエは大切な友だちなのに!

 山のてっぺんのほうに近づくにつれ、まばゆい光がネルに差しこんできました。
 クリスタルのかがやきです。
 あれを手に入れられたら!
 ネルはクリスタルに向かって手を伸ばしました。
「わあっ!」
 しかし、あたりに吹きつける風ははげしく、クリスタルに近づこうとするたびに、ネルは何度も何度も吹き飛ばされてしまいます。
 もう少しなのに……。
 ネルはくじけそうになりましたが、キッと顔をあげ、クリスタルを見つめました。
 あのクリスタルで、とびきりのくつを作るんだ!
 虹のドレス、お花のティアラ、クリスタルのくつで、最高のファッションショーを見せるんだ!
 そう強く願いながらもう一度、クリスタルに近づくと――。
「やったあ!」
 ネルは、にぎりこぶし大ほどのクリスタルをつかむことができました。
 これをくだいてちりばめれば、きっとステキなくつができあがるわ。
 ネルは、ホッとむねをなでおろしました。
 ですが……。
 ビュウウウウウウ!
 ひときわ激しい風がふきつけ、ネルの手からクリスタルが落ちそうになりました。
 ネルはとっさにクリスタルを両手でつかみましたが、そのひょうしに、ぐらりと大きくバランスをくずしました。