「いやーおどろいたな。どうしてプリンセスが魔女なんかといっしょにいるんだい?」
 魔女なんか、白ウサギの言葉を聞いて、ネルはむねに大きなくいをさされたような気持ちになりました。
「ひょっとして、さらわれてきたとか?」
 仲間のウサギたちもニヤニヤと笑っています。
「ひどいこと言わないで! あたしとネルは友だちなの。イジワルいうとゆるさないんだから!」
 モエが怒ると、白ウサギたちは
「わー、コワーい。そうカッカしないでくれよー」
 と、大げさにふるえました。
「それより、クリスタルってどこにあるの? あたしたち、それでくつを作りたいの」
 と、モエが質問すると、
「うーん、それはムリだね」
 と、白ウサギはつめたい返事。
「どうして?」
「だーって、クリスタルはあそこにあるのさ」
 と、白ウサギが指さしたのは、とてもとても高い山のてっぺん。
「あんなところに?」
「そーさ、いつも嵐が吹き荒れててねぇ。クリスタルはめったに手に入れられない高級品なのさ。ねー見てくれよ、ボクたちのマント。クリスタルの糸でできてるんだ」
「どーだい、カッコいいだろ? ビューンって飛ぶこともできるんだぞ」
 白ウサギたちはじまんげにマントをはためかせました。
 パンぞうは、ムウっとふくれて。
「なんだ、あいつら。どこまでもやなヤツだな。どうする? ネル?」
「……今回は、わたし、ひとりで行ってくるよ。パンぞう、モエをアウロラ王国まで送ってあげて」
 モエの顔色が変わります。
「ネル、どうして? あたしもいっしょに行くわ」
 けれども、ネルは首を横にふりました。
「さっきの新聞を見たでしょ? 今ごろ、アウロラ王国じゅうのひとがあなたのことを心配してる。それに、クリスタルのある山はとてもキケンなところなの。モエをまきぞえにするわけにはいかないわ」
「だけど、ネルひとりで行くなんて、もしなにかあったら!」
「わたしとあなたはちがうの。わたしはひとりでも平気。だけど、あなたはアウロラ王国のプリンセス。ケガでもしたら多くのひとが悲しむわ」
「ネル……」
「じゃあねっ!」
 ネルはひとり、クリスタルがあるという山のほうに向かって飛び立ちました。