「ネル、あたしといっしょにアイドルやろうよ!」
 パンケーキ屋さんでのダンスショーが終わったあと、モエがそう声をかけてきました。
「えぇっ?」
 わたしが、アイドル?
「うん、あんなにダンスができるんだもん。ファッションショーのときに、おそろいのドレスを着て、ライブステージやろう。きっと盛り上がるよ!」
 モエといっしょに?
 ネルの心は大きくゆらぎました。
「でも、わたしは……」
「さっきのダンスショー、楽しくなかった?」
「そういうわけじゃないけど――」
「だったら、いっしょにやろう! ねっ?」
 ネルはしばらくだまったあと、
「ちょっと考えておくね。まだファッションショーのドレスも完成してないし」
 と答えました。
「そうね。ドレスとティアラの材料はそろったけど、あとなにが足りないんだっけ?」
「あとは……くつ! くつの材料が必要なんだ」
 キラキラ光るガラスのくつみたいに、ステキなくつを作るにはどうしたらいいかなぁ。
「くつの材料だったら、あたし、いいところ知ってるよ」
 アナが口を開きました。
「それホント?」
「うん、あそこにある」
 と、アナが窓の外を指さすと。
「え? どこ?」
「ほら、だからあそこ。見えるでしょ?」
「見えるでしょ、って言われても……」
 ネルの目の前に浮かんでいるのは、まんまるお月さま。
「え……まさか」
 ネルはゴクン! と息をのみました。
「ちょーっぴり遠いんだけどね♪」
 アナがエへへへ、と歯を見せました。

「お月さまにある、クロリク・シティではピカピカのクリスタルがとれるんです。そのクリスタルで作ったくつをはくと、とっても軽やかにおどれるようになるそうですよ」
 レナの話はとてもきょうみ深いものでしたが、
「でも、月まではわたしのほうきじゃとてもムリだよ~」
 ネルは頭をかかえてしまいました。
「あとひといきなのになぁ」
 パンぞうもなやんでいます。
「それならだいじょうぶ! ネル魔女でしょ? なら、これを教えてあげる♪」
 ミナがパチッとウインクしました。