あの日は、雲ひとつない晴天で、お出かけ日和だった。
待ち合わせ場所にいた君は、いつにも増して元気で、張り切っているように見えた。
大きな桜の木が一本だけ生えている公園の、ベンチに座って君の手作りのサンドイッチを一緒に食べた。
料理に不慣れな君の作ったサンドイッチ。形はお世辞にも綺麗とはいえなかったけれど、一口食べるたびに君の気持ちが伝わってくるような感じがした。
目の前に見える大きな桜の木のように、無駄話に花を咲かせながら時が流れる。
帰り道、君と手を繋ぎながら歩いていると下校途中の小学生たちが横断歩道を渡っているのが見える。
私はその風景を眺めながら微笑む。
だけど、正義感の強い君は、その奥に見える迫り来るトラックに気付き、私の手を離して駆け出してしまう。
小学生の泣き叫ぶ声、物珍しそうにスマホを構える人々、そして横断歩道から数メートル離れた地点に倒れる君の姿。
私は君に駆け寄って必死に名前を叫んだ。君に伝えきれていないことが涙となって溢れ出し、嗚咽混じりのか細い声を絞り出す。
だけど君はピクリとも動かず、返事もしてくれない。
しばらくして到着した救急車に君は乗せられ、私は警察に事故の細かい状況を説明した後、君のいる病院に急ぎ足で向かった。
その頃にはもう、君はこの世にはいなかった。お別れの挨拶さえも、させてもらえなかった。
君の家族にその場を引き継ぎ、私は帰路についた。
しかし、いつのまにか足はあの大きな桜の木の公園に向いていた。
私は桜の木に体を預け、君との思い出を振り返る。
君と出会ったのは小学校入学直後のことだった。
あの頃の君は、今と変わらず純粋でただただ元気な男の子だった。
小学校の頃は少子化の影響かクラスは一つだけで、君と過ごした時間も長かった。
中学校の入学式の日、君は新しいクラスの人とお喋りするでもなく、私を誰もいない教室に呼び出して、好きだと言ってくれた。私の返事を待つ君は、どこか落ち着かない様子で可愛かったな。
私が笑顔で了承すると、君は私以上の笑顔を見せてくれた。
あの笑顔は、一生忘れられないだろうな。
同じクラスになることはなかったけど、登下校や休みの日、君と2人きりの時間が増えて嬉しかった。
高校に上がると、受験のことで勉強時間が増えた。相対的に君との時間は減ってしまった。
だけど、その時間が当たり前じゃないことに気づかせてくれたからこそ、より一層かけがえのないものになった。
努力家で勉強に励んでいた君は有名な大学に、絵を描くのが好きだった私は推薦で美大に進学した。それからも、なるべく時間を作って毎週会えるようにしていた。
この日は、卒業も間近に迫り、忙しくなる日々の中でやっと作れた時間だった。それなのに、こんな別れ方なんて残酷すぎるよ。
私は夜の誰もいない公園の桜の木の下で静かに涙を流す。
しばらくして涙は枯れた。だけどこの気持ちは心の中で激しく波打ち、落ち着く気配がない。
後悔と悲しみに打ちひしがれ、俯いている私の前に、一枚の桜の花がひらひらと舞い降りてきた。私は咄嗟にそれを手で受けとめる。傷つけないように優しく花びらを掴み上げ、月の光に透かす。
その美しさに、思わず私は言葉を漏らす。
「ああ、綺麗だな」
私は誓った。
君との出会い、君という存在が私にくれたもの、君との思い出は忘れない。だけどそれに縛られ、塞ぎ込んでしまうのは君も望んでいないだろう。だから、ゆっくりでいいから過去の未練は断ち切り、前を向いて生きて行く。君とまた会えた時、笑って土産話ができるように。
待ち合わせ場所にいた君は、いつにも増して元気で、張り切っているように見えた。
大きな桜の木が一本だけ生えている公園の、ベンチに座って君の手作りのサンドイッチを一緒に食べた。
料理に不慣れな君の作ったサンドイッチ。形はお世辞にも綺麗とはいえなかったけれど、一口食べるたびに君の気持ちが伝わってくるような感じがした。
目の前に見える大きな桜の木のように、無駄話に花を咲かせながら時が流れる。
帰り道、君と手を繋ぎながら歩いていると下校途中の小学生たちが横断歩道を渡っているのが見える。
私はその風景を眺めながら微笑む。
だけど、正義感の強い君は、その奥に見える迫り来るトラックに気付き、私の手を離して駆け出してしまう。
小学生の泣き叫ぶ声、物珍しそうにスマホを構える人々、そして横断歩道から数メートル離れた地点に倒れる君の姿。
私は君に駆け寄って必死に名前を叫んだ。君に伝えきれていないことが涙となって溢れ出し、嗚咽混じりのか細い声を絞り出す。
だけど君はピクリとも動かず、返事もしてくれない。
しばらくして到着した救急車に君は乗せられ、私は警察に事故の細かい状況を説明した後、君のいる病院に急ぎ足で向かった。
その頃にはもう、君はこの世にはいなかった。お別れの挨拶さえも、させてもらえなかった。
君の家族にその場を引き継ぎ、私は帰路についた。
しかし、いつのまにか足はあの大きな桜の木の公園に向いていた。
私は桜の木に体を預け、君との思い出を振り返る。
君と出会ったのは小学校入学直後のことだった。
あの頃の君は、今と変わらず純粋でただただ元気な男の子だった。
小学校の頃は少子化の影響かクラスは一つだけで、君と過ごした時間も長かった。
中学校の入学式の日、君は新しいクラスの人とお喋りするでもなく、私を誰もいない教室に呼び出して、好きだと言ってくれた。私の返事を待つ君は、どこか落ち着かない様子で可愛かったな。
私が笑顔で了承すると、君は私以上の笑顔を見せてくれた。
あの笑顔は、一生忘れられないだろうな。
同じクラスになることはなかったけど、登下校や休みの日、君と2人きりの時間が増えて嬉しかった。
高校に上がると、受験のことで勉強時間が増えた。相対的に君との時間は減ってしまった。
だけど、その時間が当たり前じゃないことに気づかせてくれたからこそ、より一層かけがえのないものになった。
努力家で勉強に励んでいた君は有名な大学に、絵を描くのが好きだった私は推薦で美大に進学した。それからも、なるべく時間を作って毎週会えるようにしていた。
この日は、卒業も間近に迫り、忙しくなる日々の中でやっと作れた時間だった。それなのに、こんな別れ方なんて残酷すぎるよ。
私は夜の誰もいない公園の桜の木の下で静かに涙を流す。
しばらくして涙は枯れた。だけどこの気持ちは心の中で激しく波打ち、落ち着く気配がない。
後悔と悲しみに打ちひしがれ、俯いている私の前に、一枚の桜の花がひらひらと舞い降りてきた。私は咄嗟にそれを手で受けとめる。傷つけないように優しく花びらを掴み上げ、月の光に透かす。
その美しさに、思わず私は言葉を漏らす。
「ああ、綺麗だな」
私は誓った。
君との出会い、君という存在が私にくれたもの、君との思い出は忘れない。だけどそれに縛られ、塞ぎ込んでしまうのは君も望んでいないだろう。だから、ゆっくりでいいから過去の未練は断ち切り、前を向いて生きて行く。君とまた会えた時、笑って土産話ができるように。
