現実は厳しいわ……。

彼女は再び、ため息をついた。

「おぉい、ルナ!!そろそろ店開けるぞ!」
カウンターの奥から、この店のマスターの声が響いてきた。

ルナがラーファス家の娘だと知りながら、気にすることなく面倒を見てくれている、とても気さくな海の男だ。

ルナは慌てて時計を見る。
もう、開店まで10分もない。

「やばっ!まだテーブル拭いてないよ!」
ルナは髪をまとめてポニーテールにすると、モップを投げ出し布巾でテーブルを吹き始めた。

その時、カラァン……と陽気にドアベルがなる。
お客が入ってきたのだ。

「まだ開店してませんよぉ……」
ルナが困ったように顔をドアに向けると、そこには腰までの長い赤髪の女剣士がルナに向かって手を振っていた。