そしてここに、そんな冒険者に憧れる少女がひとり……。

モップを杖代わりに寄りかかり、ため息をついていた。

肩にかかる長さの黒髪に、少し疲れの見える緑の瞳。
彼女はルナ・ラーファス。
ラーファス家と言えば、誰もが一度は耳にしたことがある大富豪である。
彼女は、そんな自分の生まれが嫌で仕方なかった。

だから彼女は１７になったあの日に、少しの宝石を握りしめ家を飛び出した。

冒険者になりたい！
と意気込んでいたものの……。

家を飛び出してはや３ヶ月。

いまだこの小さな港町『カナン』の、小さな酒場で住み込みアルバイトをしている日々……。