「ーぃ、おーい!おきろー?」

金具の音がし、俺は目を開けた。
目の前には見しらぬ男が指には鍵のチェーンをはめてクルクルしていた。
その男は俺に着いている手錠を外し適当に投げた。
そんなことして大丈夫なのか、?

「よし、ついてこい、!」

男はなんだか楽しそうだ。
俺は無言で男について行った。

俺、ルシアン・ノワールは幼い頃から怪盗のおじの傍で育ってきた。
だから自然と俺も怪盗として働いている。

しかし、俺が未熟だったために今こうして捕まっている。
これからどこへ連れていかれるのだろう....。

「この部屋に入って、そこにある服に着替えてね!」

「いってらっしゃーい!」と俺の背中を押し手を振った。
なんなんだ、こいつは...?

何か言っても仕方が無いと悟ったので部屋を見渡した。
そこにあったものに思わず目を見開いた。
これって......
「モーニングコート?!」
よく執事とかが着ている服じゃないか、!!
どういうこと?!
服の裾に手を通すとサイズがピッタリだった。

「着たけど.....」

「あ、いいじゃん!似合ってる!」

相変わらずこの男の心情はよく分からない。
しかし俺は1つ聞きたいことがある。

「この犯罪者の俺にまさかお嬢様の面倒でもさせようってか?!」

「おっ!よくわかったね!!」

まじかよ....。犯罪者を執事にさせようなんて狂ってる。

「よし、行くぞ!」

意味が分からないがお嬢様に悪人を付ける人が気になって素直について行った。

しばらく歩くと頑丈そうな扉の前に止まった。
もしかしたらこの先にお嬢様がいるのでは......?

「気をつけて、言動ひとつで首が飛ぶよ」

男は笑顔のまんま恐ろしいことを口にした。
首が飛ぶ?!これから?!
ギギィッと重い扉が開いた。

覚悟を決めるべきだな。
俺は手を強く握って扉の中へと入った。

「失礼します」と礼をし、顔を上げた。
その時1人の女の子と目が合った。
すぐに逸らしたがとても整った顔立ちだったのですぐにお嬢様だとわかった。

彼女はこちらをじっと見ている。
なんか、やりずらいな....。

「ルナリス様、こちらのものになります」

男は俺の背中を押し前へ行かせた。
前には上流階級そうな男の人がこちらを睨んでいた。

「......ルシアン・ノワールといいます」

とりあえず自己紹介はしておこう。

「......まぁいい、ミレナ、こいつでいいだろう」
と興味の無さそうな声だった。

ミレナ.....?もしかしてさっきの子?
ミレナさんの返事は無い。
自己紹介からずっと頭を下げているため周りの様子が一切分からない。

「それではこれからよろしく」と男の人は俺の返事を待たずに部屋から俺を出させた。

一体なんだったんだ...?

「良かったな!首が跳ねなくて!」

男は相変わらず楽しそう。
「ということでこれからここで働いてもらうからね!」

そんな気はしてた。

「まじか.....。」

「あっ、でも安心して!多分1ヶ月ぐらいだから!」

「え?1ヶ月?」

それはどういうことだ?

「今までの人は1ヶ月で辞めさせられているらしいよ、お嬢様が気に入らないんだって」

どうやら俺の着くお嬢様はわがままな人らしい。
本当のところは分からないけど、

「でも、顔は凄い整ってたよね!」

「え?」

「まぁ、僕ら執事には容赦ないけど」

「あっそ、それで俺らはどこに向かってっー、、」

俺が言い終わる前に手で口を塞がれた。

()じゃなくて()、ね?」

「......」

どうやら言葉遣いも強制させられるらしい。
たった1ヶ月の為に。

一通り教えてもらい、俺は......僕はお姫さまに会うことになった。

少し不安だ。
しかし命じられたため絶対行かなければならない。

とうとうお姫さまの部屋の前に着いてしまった。

コンコンとノックすると「はい」と可愛らしい声が帰ってきた。
指の先が金属製の扉のドアノブに触れて少しビクついた。
思っていたよりも冷たくて自分の体温が高いことに気づいた。

緊張する....、一呼吸、いや、二呼吸ぐらいして
僕はドアノブを握り扉を開けた。

その時僕の目の前が琥珀色で染った。と同時に体に重さが加わった。

「えっ...?!」

「わぁっ.....!!」

香り、ムスク....?

ふんわりとした香りですぐにわかった。

「おっ..お嬢様?!?!」