4.帰る場所
着いたのは、私が穂香を呼び出した裏庭だった。
夜見が、大きく音を立てて近くの壁に手をつく。
ドキリとした。恐怖で。
幼いころの記憶が、蘇る。
『お前なんか…っ…』
『やめてください…!』
頬に走る衝撃、壁や床に打ち付けられて痣だらけになった体。
泣き叫ぶ母親に、手を止めない父親。
もう、終わったことなのに。
呪いのように、私に纏わりつく、不快な記憶。
なんとか震えを止めて、「なに?」と聞いた。
「こっちは忙しいの、手短に済ませて」
冷静を装って言った。そう見えたかはわからない。
「そうだな、こっちも暇なわけじゃないんだ、すぐに終わらせる」
意外な返事だった。さっぱりとしていて、なんだか拍子抜けしてしまった。
「……そう」
「俺が聞きたいことは2つだ。一つ目、
お前は西川穂香をいじめているのか?」
衝撃でも何でもなかった。誰もが知っていることだ。
直接聞かれたのは初めてだけれど。
「そうだけど、それが何?」
「それ以上を聞くつもりはない。二つ目。
毎日、
……家に、帰りたいと思うか?」
――――――帰りたいわけがないだろ。
でも帰らなきゃいけないんだよ。
生きていくために。
「………………どうして、そんなことを聞く?」
「俺は、帰りたくなかった」
だから何だというのだろう。
「そう」
「質問に答えろ」
「帰らないといけない、とは思う」
そう、それは、しなければいけない、義務だ。
そもそも、帰りたくないからと言って、他に行く当てがあるわけでもないし。今はおとなしく我慢するしかない。
だから、帰りたいと望んだことはなくても、帰らなければいけないと理解はしている。
「……そうか」
少し俯き、夜見が返事をした。
いったいこれは、何の時間だったのだろう。
「質問は終わりだ。もういい」
連れてきておいてそんな態度ないだろ、と思いながら、教室に戻ろうとした。
その時、小さく背後から聞こえた声は、
「忠告しておく。今すぐいじめをやめたほうがいい」
心から後悔しているような、辛そうな声だった。
そんな忠告、聞くわけないだろ、と思いながら、それなのに、なんだか、泣きそうになった。
「……そう」
結局、それしか答えられなかった。
着いたのは、私が穂香を呼び出した裏庭だった。
夜見が、大きく音を立てて近くの壁に手をつく。
ドキリとした。恐怖で。
幼いころの記憶が、蘇る。
『お前なんか…っ…』
『やめてください…!』
頬に走る衝撃、壁や床に打ち付けられて痣だらけになった体。
泣き叫ぶ母親に、手を止めない父親。
もう、終わったことなのに。
呪いのように、私に纏わりつく、不快な記憶。
なんとか震えを止めて、「なに?」と聞いた。
「こっちは忙しいの、手短に済ませて」
冷静を装って言った。そう見えたかはわからない。
「そうだな、こっちも暇なわけじゃないんだ、すぐに終わらせる」
意外な返事だった。さっぱりとしていて、なんだか拍子抜けしてしまった。
「……そう」
「俺が聞きたいことは2つだ。一つ目、
お前は西川穂香をいじめているのか?」
衝撃でも何でもなかった。誰もが知っていることだ。
直接聞かれたのは初めてだけれど。
「そうだけど、それが何?」
「それ以上を聞くつもりはない。二つ目。
毎日、
……家に、帰りたいと思うか?」
――――――帰りたいわけがないだろ。
でも帰らなきゃいけないんだよ。
生きていくために。
「………………どうして、そんなことを聞く?」
「俺は、帰りたくなかった」
だから何だというのだろう。
「そう」
「質問に答えろ」
「帰らないといけない、とは思う」
そう、それは、しなければいけない、義務だ。
そもそも、帰りたくないからと言って、他に行く当てがあるわけでもないし。今はおとなしく我慢するしかない。
だから、帰りたいと望んだことはなくても、帰らなければいけないと理解はしている。
「……そうか」
少し俯き、夜見が返事をした。
いったいこれは、何の時間だったのだろう。
「質問は終わりだ。もういい」
連れてきておいてそんな態度ないだろ、と思いながら、教室に戻ろうとした。
その時、小さく背後から聞こえた声は、
「忠告しておく。今すぐいじめをやめたほうがいい」
心から後悔しているような、辛そうな声だった。
そんな忠告、聞くわけないだろ、と思いながら、それなのに、なんだか、泣きそうになった。
「……そう」
結局、それしか答えられなかった。

