「ひ、日向くん……?どうしたの……?」
「…………」
無言のまま抱き寄せられている。
本当にどうしたんだろう?日向くんもさっきの会話で嫌な気持ちになっちゃった?大丈夫かな……?
「はぁ……行かせたくない」
「え……?」
「ライブ……」
そうだ、もうすぐライブの時間だ。弱っている場合じゃない、準備に向かわなきゃ……!
「アイドル頑張っている橙山さんは応援したいけど、みんなの橙山さんになるのは嫌だ……」
「このまま……俺だけの時間が続けばいいのに……」
なっ……!
抱き寄せられた手の力がまた強くなって……でもいつもみたいに、またからかって!なんて言える雰囲気でもなく……
私もこの空気感が心地よくて……ドキドキが止まらない。
空気に飲まれてしまったかのように、ライブの時間ギリギリまでこのまま2人でいた。

