「あ、ありがとう!日向くんも甚平すごく似合っているよ!大人っぽくなるね」
「ん……ありがと」
やっぱり今日の日向くんはなんだかおかしい……
「行こっか」
2人の間に微妙な距離ができてムズムズする空気の中、夏祭り会場を回る。
熱気に包まれた会場とは反対に、緊張のせいなのか……私たちはいつもみたいに話すこともできず、ちょっぴり気まずさをまとっている。
いつもなら色々と食べたくなるのに、緊張が理由なのか、この空気感が理由なのか……お腹もすいてこない。
「あの人かっこいいね」
「隣の子は彼女だよね、いいなぁ……」
そんな声が聞こえてきて私の中で気まずさが頂点に達し、口を開いた。
「日向くん……やっぱり付き合っているフリとか……やめた方が……」
少しでも不審がられる要素を減らす作戦として、今日は私たちは、付き合っている2人として夏祭りを回ることになっている。
本当にデート……のフリなのだ。

