俺は初等部の頃から勉強は学年1位だった。別にすごいわけでもない、瞬間記憶があるのだから。

初等部の頃は今ほど取り繕うのも上手くなかったし、何人かからはやっかみもあった。

初等部とはいえ高学年になってくると、人付き合いに疲弊してきて、中等部でもこれが続くのか……と憂鬱になっていた5年生にあがったばかりの頃、恒例のテスト結果が出た。



「琥珀ちゃん、また2位だね……本当すごい」



森野さんに褒められている彼女がいた。

初等部入学時から存在は知っていたものの、同じクラスになったことがないので、彼女の人となりは知らなかった。

橙山琥珀……いつも2位の子だ……また色々言われるのだろうか、関わらない方がいいかな……なんて思っていた。

でも彼女は違った。



「うぅ……結構自信あったのに……さすが日向くん、毎回敵わないなぁ」

「琥珀ちゃんも頑張ってるって。いい目標というか、ライバルだね」

「日向くんに認識してもらえているとは思えないけどね……でも、上には上がいるって思うと頑張れるよね」



たったそれだけだけど、やさぐれていた俺の心はかなり救われた。