「あのさ……授業まで時間あるし、ちょっと話さない?」

「う……えっと……あの……」



なかなか煮え切らない私を見て、日向くんはニコリと微笑む。



「ここ、今ちょうど人いないけど……もう少ししたらもっと人増えるかもね」



言われてハッとした。

そっか、客観的に見ると今の私たちは廊下で見つめあっている2人…なのだ。誰もいなくて助かった……

2人になるのも気が重すぎるけど、目立ってしまうのも避けたい。

口止めをお願いするのにもちょうどいいと思い、私は渋々口を開いた。



「……場所、変えてお願いします」

「ん、移動しようか」



またニコリと微笑んでいる。

みんなから王子スマイルと呼ばれるこの笑顔も、失礼だけど今の私には悪魔の微笑みに見えてしまった。