「橙山さん、ありがとう」
背後から声が聞こえてくる。
振り返らなくてもわかる、昨日も聞いたあの柔らかい優しい声。
そっと振り返ると、予想通り日向くんが立っていた。
私の肩に置いた手の力が強くなり、守られているように感じてしまう。
「もし……言いたいことがあれば直接僕に言って?」
優しい口調で微笑みながら伝えているのだけど、なんだろう……怖さを感じる。
悪く言っていた男子たちも同じように思ったみたいで、悪かった!なんて言いながら走って行ってしまった。
「ごめんね、大丈夫?」
「あっ……うん」
優しい顔で心配そうに私の顔をのぞき込む日向くん。
ホッとしたのもつかの間、目の前にいるのが今の私の悩みの中心人物であることを思い出してしまった。
ど、どうしよう……気まずい……

