日向くんに手を引かれたまま、私たちは園内を走っている。

ドラキュラが黒猫を引っ張っている……



「あっあの!日向くんっちょっと止まって……」

「ダメ。そろそろ橙山さんが俺の言うこと聞く番だから」



う……こう言われては大人しく従うしかない。


ようやく日向くんが足を止めたのは、お城の次に高くて目立つ、パークの一番奥にある岩山の上だった。

もちろん本物の岩山ではなく、遊園地の景観に合わせて作られている人工的な岩山である。

閉園時間が近づいているからか、周囲には私たちのほかに誰もいない。


ここに着いたのもつかの間、すぐに抱きしめられた。

けれど、嫌でもないし驚きもしない……いつもは抱きしめられるだけだったけど、今は私も日向くんを抱きしめたかった。

日向くんを感じながら、私も日向くんの背中に手を回した。

私が抱きしめ返すと、日向くんの体がピクッとしたけれど、そのまま抱きしめられ続けて安心した。