案内された楽屋は、会場を出た廊下の手前の部屋……つまりは例の落札者部屋の隣にある。

今日はオークション開始時間までは不正のないよう、会場へは一切入れないようになっている。

会場の構図は、今の段階では事前打ち合わせの資料でしかわかっていないから、せめて周辺環境だけでもわかるように、また、もう1つのミッションのために夜兄が近くに楽屋を配置してくれた。

マネージャーというのは……今日は日向くんだ。

翡翠のジュエルで大人の男性に見える。

スーツにネクタイにメガネ……すごくかっこよくて見とれてしまいそう。



「ん?」



きっ気づかれた……ずっと見ていたのバレちゃったかな……恥ずかしい。



「……ネクタイ、クイってしてみてほしいです……」

「……?こう?」

「…………!」



ってなに言ってんの私!?見とれているのバレたからってとっさに変なことを口走っちゃったよ……!

けれどすごい破壊力……ちょっとヤバいかも……私そんなフェチがあったのかな……

1人モダモダしていると、日向くんがニヤリとしながら近づいてきた。



「いくらでもするけど?」



またネクタイをクイっとしながら悪い笑みを浮かべている。

これは……全て見透かしている顔だ……恥ずかしい……