こんな物語

 問い返してくるリーシャに今度はアスタは小首を傾げる。

 
 「だから、二人の馴れ初め。そのままの意味だと思ったんだけど。それとも、僕には教えたくない?」

 「馴れ初めも何も、そんなの無い」

 「意味の無い嘘は吐かないんだよね?」

 「嘘じゃなく、本当に解らない。それに、どうして嘘だと思う?」


 解せない、という瞳で互いに見つめ合う。
 その視線を先に逸らしたのはアスタで、逸らされたアスタの視線はベッドの上で規則正しく寝息を立てるラナルフへと注がれる。


 「リーシャが良いと言ったのはラナルフだ」

 「それで?」

 「仕事以外に興味を示さないラナルフが婚約者にはリーシャが良いと言った。それだけでも十分奇跡なんだから、何か馴れ初めくらいあるだろう?」

 
 リーシャはふとラナルフへと視線を巡らせて、考える。
 アスタがそう考えるのも話は解る。寧ろ、リーシャの何を知るでもなく、ただ出回っている噂に賭けて婚約を決めたというよりもずっと信憑性のある話だ。
 ただし、それも事実ならばだけれど。