こんな物語

 その視線の先に居たのはベッドに横たわるラナルフで、アスタは意味が呑み込めずにラナルフを見つめる。ただ黙って見つめているアスタに補足説明、とでも言うようにリーシャが口を開く。


 「運べ、無かっただろう?」

 「リーシャ。僕だってリーシャの何を知っているわけじゃないから、私の何を知っている。なーんて言われたらそれまでだけど、時々恐ろしくなるよ。本当に同じ人間なのかってね」

 
 聞きたかったのは別の答えに、溜息交じりにアスタは言う。
 リーシャはそんなアスタに嘲笑に似た笑いを零して口を開く。


 「恐怖を覚えるのに毎日図書館まで来るなんて、正気の沙汰とは思えないけど?」

 「僕はリーシャのことが大好きだからね」


 胡散臭い笑顔で言うアスタに、リーシャは毒気が抜かれた様に声を立てて笑う。
 
 
 「よくもまあ抜け抜けと。
 そんなことばかり言ってると、折角出会えた婚約者殿とやらに愛想をつかされるぞ?」

 「誰にでもじゃないよ。言ってるのは彼女とリーシャにだけだ」

 
 誰にでも言うのも問題だが、限定だというのならそれもそれで問題だということに全く気付いていなさそうなアスタにリーシャは嘆息を零す。
 

 「そっちの方が大問題だ、阿呆」

 「大丈夫、彼女は解ってくれてるよ。それよりも僕は、リーシャとラナルフの馴れ初めが聞きたいんだけど」


 仲が良いのか悪いのかを聞かれるならまだしも、婚約の縁談で知り合った二人の馴れ初めが聞きたい、とは可笑しな話だ。まして、縁談の話を知っている者の口から出るとは思えない。リーシャは意味が良く理解できずに首を傾ぐ。
 

 「どういう意味?」