こんな物語

 ラナルフの自室につくとすぐ、アスタは頼んだことはしてくれた。
 男なだけあって、リーシャが一人では引き摺ることしかできなかったラナルフを軽々と持ち上げ、ベッドへと寝かせる。
 
 ベッドの上で規則正しく寝息を立てるラナルフを一瞥し、振り返ったアスタの視線の先には山の様に積み上げられた書類の山がある。

 
 「リーシャ、これ…」

 「あいつがここ数日で溜めた仕事だ」

 「原因はもしかしなくても、僕にある?」

 「まあ、間接的にはな」


 原因、は言わずもがな、カトリーヌにあるのだが、そもそもそのカトリーヌをラナルフの元へと向かう最大の切欠を作ったのはアスタなのだから、リーシャは否定をせずに肯定した。


 「まさか、此処まで溜めるとは思わなかったよ。
 そんなに無能だった記憶は無いんだけどな…」


 ぼやく様なアスタの独り言に、リーシャは答える。


 「無能では無いんだろうが、手際が悪い」

 「……男の面子が丸潰れだよ、リーシャ。
 そんなに僕等に恥をかかせたい?」


 きっぱり、と指摘するリーシャにアスタは複雑そうな顔で尋ねる。


 「もしそうなら、今すぐ医者を呼びに行ってるところだ。
 そんなことより、アスタ。今まで十分手伝ってきたんだ、これ、手伝ってくれるだろ?」


 リーシャはこれ、と山積みになった書類をポンポン、と軽く叩いてアスタに笑んでみせる。
 有無を言わせないような笑みに、アスタは溜息交じりに頷くしかできなかった。