リーシャは、神妙な顔をして入ってくるラナルフを見ながら、小さく溜息を落とす。


 「話があるといったのは君だろう?そこに、座っても良いから話してくれなくちゃ私が寝れない」


 そこ、とリーシャは入口に立ったままのラナルフにベッドから少し離れたところにある椅子を示す。自分はそう言いながら、昨日と同じでベッドに腰掛け、ラナルフが話し出すのを待つ。


 「昨日言い忘れたことがあったんだが…、」

 「新たな条件は却下するよ。昨日のうちに言わなかった君が悪い」

 
 可笑しな条件を与えられたのでは冗談じゃない、とリーシャは早々にラナルフの話を遮ってきっぱりと告げる。すぐにラナルフは眉を顰めてリーシャを見てくるが、そんなものはリーシャには効かない。


 「そんな顔をしても無駄だよ。私は君が選んだとおり、君になびくような女じゃないからね。まあ、折角来たんだし、話すだけ話してみなよ。そっちの方が君もすっきりするだろう?」

 「聞いてもらえないと解ってるのにか?」

 「それはさっきも言ったけど、昨日のうちに言わなかった君が悪い。聞かないと、私が待ってた甲斐が無いだろう?待たせた罰を受けてるとでも思って話せば良いよ」


 ラナルフは諦めたようで、軽く嘆息して口を開く。


 「母がお前との婚約を反対してるんだ」

 「それで?」

 「だから、お前のことを母に認めさせないとならない」

 
 言いたいことは大体察しがつく。けれど、本当にラナルフというのは噂通り優秀なのだろうか、とリーシャは疑わずに居られなかった。
 一度政務として公の場に出れば、動揺などをすべて隠して上手く振る舞えるその所作は見事と言えるが、この話しぶり。仕事の場合はもっと別の話方をするのだろうか、とラナルフを見遣る。

 
 「君の話は要領を得ない。君の状況は解ったが、君は肝心の、私に何をしてほしいか、を伝えてない。プライベートではなく取引相手と話していると思って話して」

 
 これで同じ話方だったら無能というレッテルを貼ってやろう、とリーシャは勝手に決めて話を促す。
 ラナルフは眉を顰めたが、軽く嘆息してまた口を開く。